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心の癒しを妨げる、仮面(ペルソナ)との同一化

あなたは、自分の役割にとらわれすぎて心が疲れ切っていませんか?

みんなのムードメーカー役の自分、まとめ役の自分、物わかりのいい部下、みんなを引っ張っていく理想の上司。この世界で生きている私たちには様々な役割があり、役割に応じた態度をとることを強いられる場合があります。

でも、このような役割にとらわれすぎると、心が疲れてしまうことがあります。それは、役割に応じた態度を見せる自分(外向けの自分)と、ほんとうの自分との間に大きなギャップがあることが原因かも知れません。

今回のブログでは、このような外向けの自分とほんとうの自分との間のギャップを少しでも解消して心の癒しを得るためのヒントを、ユング心理学の観点から探っていきます。

目次

役割にこだわりすぎると、なぜ心に不調をきたす?

①外向けの自分とほんとうの自分

自分の役割をうまくこなすため、役割に応じた態度を示すことは必要なことかも知れません。

でも、このような外向けの自分は、決して自分自身ではなく、私たちの一面にすぎません。

ユング心理学では、このような外向けの自分を生み出す心の部分を、ペルソナと呼んでいます。

ペルソナとは?

ラテン語で「仮面」を意味します。ユングは、自分の周りからの期待などに応えようとしてでき上がった心の部分や心の外的な構えを、ペルソナと名付けました。

「この、しばしば苦心の末にでき上がった集合的な心の部分を、私はペルソナと命名した。ペルソナという語はこれにうってつけの表現である。なぜならペルソナはもともと役者がかぶった仮面で、役者の演じた役を表すものであったからである。」

『自我と無意識の関係』(C.Gユング 野田倬訳 人文書院 p.58)

下に示す円は、ユングが考える人格の全体性を表しています。ペルソナは、外の世界に見える殻のように表されています。ほんとうの自分を表す『個体』(あるいは『個性』)とは明確に区別されています。なお、『個体』、『アニマ』、『影』などについては、別のブログでご紹介する予定です。

人格の全体性を表す円
『夢分析I』(C.Gユング 入江良平訳 人文書院 p.83)

②仮面が外せなくなる!(ペルソナとの同一化)

自分の役割に応じたペルソナをもつことは、社会生活を円滑に進めるために必要だと思います。しかし、周囲の期待に応えようとするあまり、ペルソナそのものを自分自身と考えると、外向けの自分と、ほんとうの自分との間のギャップが広がっていきます。

こうなってしまうと、自分のほんとうの心を他人に偽り、時には自分自身を偽ってしまうことがあるようです。

「ペルソナは集合的な心の仮面にしかすぎない。個性というものがあるかのように見せかける仮面なのである。」

『自我と無意識の関係』(C.Gユング 野田倬訳 人文書院 p.58)

これをユング は、ペルソナとの同一化と呼んでいます。いってみれば、仮面が硬くなりすぎ、外せなくなっている状況です。常に仮面を被って生活しているようなものです。

そうすると、自分自身の他の面が無意識下に抑圧され、心に不調をきたしてしまったり、抑圧された心の部分が不意に現れ、考えもしないような失敗をしてしまうことがあるようです。

ペルソナとの同一化を防ぐために

①ペルソナを自覚する

ペルソナとの同一化を防ぐため、以下のユングの言葉のように、ペルソナを自覚することが大事だと思います。

『自分とは私がしていることそのものだなどと、私が信じるならば、これは恐るべき過ちでしょう。私はこんな人物とは一致しないでしょう。私は皆さんを満足させるために、しばらくのあいだ一定の役割を演じているだけなのだ—私がそう言ったとたん、私は健全になります』

夢分析I』(C.Gユング 入江良平訳 人文書院 p.112)

今自分は、ある役割を果たすためにふさわしい態度を周りに見せているだけだ、と自覚していれば、ペルソナと同一化してしまうリスクを減らせるでしょう。

②無意識(夢)からのメッセージに耳を傾ける

でも、わたしたちが本当にペルソナと同一化しているのかわからない場合、どうしたらよいのでしょう。その答えは、が教えてくれるかも知れません。

以下のブログでご紹介しましたように、無意識は、いきすぎた意識の態度を補償する夢を提供することがあります。

夢では、ペルソナは服や帽子など身に付けるもの、として現れることがあります。たとえば、ダブダブの服を着ている夢を見た場合、君に見合わないペルソナを被っているよ、と無意識が指摘している可能性があります。

また、自分が高い役職や身分にいて、それを自分そのものと思い込んでしまっている時、みすぼらしい身なりのかかしの夢を見るかも知れません。

③ありのままの自分を受け入れる

私たちには皆、人には見せたくない部分、自分でも認めたくない弱い部分があります。このような部分もひっくるめて、私たちが成り立っています。自分の内面を見つめ、自分の不愉快な部分を認め、ありのままの自分を受け入れることで、ペルソナとの同一化を防げ、外向けの自分とほんとうの自分との間のギャップを埋めることができるでしょう。

『その人のあるがままの姿のみが治癒力を持っているのである。

『自我と無意識の関係』(C.Gユング 野田倬訳 人文書院 p.77)

まとめ

硬直化してしまった自分の仮面(ペルソナ)を外し、ありのままの自分を受け入れるということは、なかなか難しいですが、ほんとうの癒しへの第一歩ではないでしょうか。

次回のブログでは、ありのままの自分を受け入れるために知っておきたい、私たちの心の抑圧された部分、『影(シャドウ)』についてご紹介します!

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