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夢がもたらす心の癒し

あなたは昨夜どんな夢を見ましたか?

懐かしい昔の友人に会う夢?それとも恐ろしい災害に巻き込まれる夢?

でも、なぜ、何のためにこのような夢を見るのでしょうか。

実は夢は、私たちの心を癒すための無意識からのメッセージかも知れません。

今回は、私たちが見る夢と心の癒しの関係についてユング心理学の観点から探求していきます。

目次

夢に本当に意味がある?

①おかしな夢を見た!

空を飛ぶ夢、小人や巨人になる夢、恐竜に襲われる夢など、現実では不可能な、おかしな夢を見ることがあります。

楽しい夢は、朝目覚めた時に私たちを良い気分にさせてくれますが、悪夢のように不愉快な気分にさせる時もあります。

ただ、夢は奇妙で論理性もないように見えるため、価値のないものだとして片付けられがちです。

しかし、夢をとりわけ重要なものと扱い、心理分析の主要な手法と位置付けた心理学者がいました。C・G・ユングです。

②夢の重要性(癒しにつながる無意識からのメッセージ)

「アナリストが必要とする一切の材料は夢から獲得できるのです。夢は治療に必要な一切のものを明らかにします。」

『分析心理学』(C.G.ユング 小川捷之訳 みすず書房 p.246)

ユングは、患者の治療において夢を大変重視していました。なぜ、夢がそれほど重要なのでしょうか?

夢には、心の癒しにつながる無意識からのメッセージが含まれると考えていたからです。

人は、草の上に寝転んだり、登山をしたり、海水浴をしたり、満天の星空を眺めたり、自然に触れることで心が癒されます。自分の中にも自然があります。それが無意識です。

夢を通じて自分自身の中にある自然、つまり無意識に触れることで心が癒されるのです。

無意識とは?

自分では自覚できない思考や感情、欲求、記憶、認識のプロセスを含む心の領域

ユングは、無意識を個人的無意識集合的無意識に分類しています。

  • 個人的無意識:個人的に忘れてしまった記憶または何らかの抑圧によって故意に失った記憶、意識に上がることもなかった感覚や知覚、意識に未だ上がっていない内容を含む。
  • 集合的無意識:私たち個人がこれまで獲得したものではなく、人間共通の心の内容を含む。これまでに触れたことのない神話的な内容な夢を生み出すこともある。

癒しへの試み

①夢の基本的な機能(心のバランスをとる)

「ある運命を生きなければならない人々は、その生き方を妨げられると、神経症になります。」

『夢分析Ⅱ』(C.G.ユング 入江良平/細井直子訳 人文書院  p.139)

私たちは、常に様々な誘惑や妨害にさらされており、心のバランスを崩す原因となる、私たちの個性に見合わないような道に、誘い込まれてしまいます。また、ストレスや心の傷、トラウマなどで心のバランスを崩している方もいるでしょう。

ユングによれば、無意識は、このような状態にある心のバランスを取り戻させるため、私たちを本来の道に引き戻すような内容の夢を送ります。

自然はバランスを好みます。私たちの中の自然である無意識は、心のバランスを取ろうとすることで、私たちを癒す試みを行っているようです。

このような心のバランスを取り戻させるための機能が夢の基本的な役割であり、ユングは夢の補償的機能と呼んでいます。

②補償的機能を示す夢の例

「眩暈を起こしそうな高所、気球、飛行機、飛ぶことや落ちること、などといった夢は、偽りの想定、自分自身への過大評価、非現実的な意見、誇大的な計画などをその特徴とする意識の状態に付随して生じることが多い」

『夢分析論』(C.G.ユング 大塚紳一郎訳 みすず書房 p.175)

自分に合わないような無茶で無謀な計画、願望を企てていると、このような夢をみる傾向にあるようです。自分自身を見つめ直し、無理をしていないか考えてみると良いかも知れません。

「現実では重要に見えないものが、夢では途方もなく強調されるというのはよくあることです。夢見手が何かを過小評価していると、その存在を際立たせようとして異様に大きなものとして出てきます。そしてその反対に、きわめて重要なものが小さくなるということも起こります。」

『夢分析Ⅱ』(C.G.ユング 入江良平/細井直子訳 人文書院  p.252)

たとえば知人や家族の誰かを低く見過ぎていると、その人が偉大な人物として夢に現れたりすることもありそうです。

また、逆にあなたが誰かを過剰に怖れていると、その人が滑稽でとるに足らない人物として夢に現れることもあるようです。まるで、夢があなたを勇気づけてくれるかのようです。

夢のメッセージの受け取り方

①夢を書き留め、夢のイメージが自分にとって何を意味するのか突き止める

夢を、思い出せる限り詳細に書き留めてください。そして夢に登場した各イメージが、自分にとってどのような意味を持つのか考えます。具体的には、そのイメージに関して、夢を見た本人の心に浮かんでくること、連想したことを記録します。

夢を見た人によって、夢のイメージが意味するものは異なります。なお、1つの夢ではイメージの意味や解釈は難しく、さらに全く意味不明なイメージが出てくることもあるため、仮の解釈で構いません。

また、怖い夢や不愉快な夢の夢を見た場合、そのイメージから逃げ出してしまう連想をしがちですが、夢のイメージから離れすぎないように注意しましょう。

②今の意識態度に対応する夢が現れることに注意!

「私たちが夢に見るのは自分の問題あるいは困難です。」

『夢分析Ⅰ』(C.G.ユング 入江良平/細井直子訳 人文書院  p.24)

夢は心のバランス(意識と無意識のバランス)をとるため、今の私たちの意識態度に関連する無意識が、夢として現れることがあります。

そのため、今の私たちの意識態度を知ることが重要です。

あなたは、知人を過剰に見下していませんか?逆に怖れ過ぎていませんか?ある問題を過剰に深刻に考えていませんか?逆に楽観視し過ぎてはいませんか?

③一連の夢から解釈を修正する

「前後関係のない夢を一つだけ取り出すと、どんなことでも推測できますが、例えば、二〇とか一〇〇くらいの夢のシリーズを比較すると、そこから興味深いことがわかってきます。夜から夜へと無意識のうちに経過してゆく過程や、昼・夜の別なく広がっている無意識の心の連続性がわかります。恐らくわれわれはいつも夢を見ているようです。昼の間は意識があまりにも明確なので気づかないのです。」

『分析心理学』(C.G.ユング 小川捷之訳 みすず書房 p.124)

1つの夢では難しかった解釈が、複数の夢を比較していくと可能になってくることがあるようです。夢が私たちに伝えようとしているメッセージが浮かび上がってきます。

④心にバランスが取れていく


夢のメッセージを受け取る試みを続けていくと、今まで気づいていなかった無意識の内容の一部が意識化されます

ユングはこれを、無意識と意識の同化、無意識と意識との結合などと呼んでいます。つまり、無意識と意識のバランスが取れている状態、心のバランスが取れている状態に近づきます。

私たちの心に、失われていた癒しがもたらされることが期待できるでしょう。

まとめ

「夢を解釈するということは、忘れ去られた本能の言語を学び直すことができるまでに、意識を豊かなものにすることだ」

『夢分析論』(C.G.ユング 大塚紳一郎訳 みすず書房 p.178)

夢を通じて無意識からのメッセージを受け、それを解釈によって意識化していくと、心のバランスを崩させる原因となる無意識の抑圧が防げ、心の癒しにつながるかも知れません。

今回は、ユング心理学の観点から、私たちが見る夢と心の癒しの関係について紹介してきました。

ユングの著作には、心に刺さる言葉、癒しにつながる気づきを与えてくれるメッセージが、多く含まれています。

次回以降では、ユング心理学の豊さと奥深さをさらに探求していきます!

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